ひぐちの本「書評」

全国自立生活センター協議会編
『自立生活運動と障害文化』
現代書館、

 街を車イスに乗った女性、男性が歩いていく。日本でもようやくそれはありふれた
光景になってきた。バリアフリーという言葉もよく耳にする。しかし、例えば車イス
に乗った人の暮らしぶりを私たちはまだまだ知らない。「障害者」と呼ばれる人たち
が何を求め、どのように社会を変えてきたのか、世に知られていないことが多いので
ある。
 この本は障害者が日本でどのように自立生活運動、障害者解放運動に取り組んでき
たかを、一五の団体、二九人の個人を選び、執筆、インタビューを通じて明らかにす
る画期的な取り組みである。
 日本には現在、障害者が主導権を持って権利擁護、情報提供、介助派遣サービスな
どを行う自立生活センターが九七カ所ある。アメリカから刺激を受けて、東京都八王
子市に日本で第一号のセンターができたのは一九八六年である。
 しかし、自立生活運動と呼ばれる、障害者自身が自らに誇りを持って「障害文化」
をはぐぐみ、自分の暮らし方を自分で決める力を持つ運動、障害者が施設や親元でな
く、街
で暮らせるようにする社会変革、価値観の転換を訴える動きは、少なくとも六〇
年代から日本にもあった。本書はそうした動きを担った団体、個人もしっかりと取り
上げている。
 編者である全国自立生活センター協議会の前代表で自らも脊椎カリエスの
樋口恵子さんがが述べ
ているように、障害者である自分を否定するのではなく、「自分は自分なりに精一杯
生きてきた、かけがいのないすてきな存在なのだ」と認められる社会を実現するため
の運動の歴史がここにある。
 障害者の自立生活運動は二四時間介助の実現など行政サービスの向上を実現させて
きた他、利用者が主体となり、サービス提供の担い手となることで良質のサービスの
保証するという斬新な手法を定着させてきた。これは高齢者の介護保険にとっても重
要な教訓である。
 障害者、日本の社会全般のありように関心のある人にとって聞き逃せない肉声が本
書からは伝わってくる。
長瀬修(障害学研究会共同世話人)

2001年6月3日中国新聞掲載


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