私の友人の障害者で弁護士の東さんが、障害者差別禁止法のたたき台を作ってくれました。
2001年後半で日弁連の決議やDPIでも具体化に向けて動き始めています。ぜひみなさんのご意見をお寄せください。
障害者差別禁止法概要
目的
・この法律は、障害を持つ人に対する社会的不利益の原因が、その障害を持つ人の個人的属性に起因するものではなく、むしろその人達を取り囲む社会の側に差別の根元が有ることを確認するとともに、国家並びに国民による差別を包括的に禁止することを目的とし、
さらに、差別や虐待を受けた場合に、その人権を回復するための有効で適切な行政救済および司法救済の手段を障害を持つ人個人に提供すること目的とする。
第1章 総則
障害を持つ人の定義
・個人の属性のうち身体的または知的もしくは精神的な要因により日常生活あるいは社会生活上の不利益を受けうる状況にある人を言う。
自己決定権
・障害を持つ人は、いかなる障害を持つ場合であれ、等しく個人として尊重される。
・法律上の手続きによる場合を除いて、生活全般に関する意思決定に関して、自己の利益にも不利益にも、他人の関与を受けない権利を有する。
差別の一般的概
・同世代の個人がその社会で体験可能なすべての生活分野において受ける、障害を持たない国民と異なった制度、慣習、態度、言動、サービス、資格付与、その他一切の不利益的取扱を言い、作為によると不作為によるとを問わない。
差別を受けない権利
・障害を持つ人は、差別を受けない権利を有する。
・この権利は、行政救済および司法救済の具体的な法律上の根拠となる。
・この権利の回復の訴えを受けた裁判所は、金銭賠償のほか、差別を積極的に是正するための相当な作為もしくは不作為の措置を命じることが出来る。
・障害を理由にした差別ではないとする主張は、その立証がなされない限り、差別とみなされる。
差別禁止の名宛人
・国、地方公共団体、法人、および国民は障害を持つ人に対して差別を行ってはならない。
制約を受ける場合の原則
・法律上もしくは社会的制度に基づいて、例外的に、国民一般と異なる制約の下で生活を強いられる場合においても、それはもっとも制約の少ない環境、方法、手段に基づくものでなければならない。
・その制約がもっとも制約の少ないものであるか否かは、その法律や制度の目的の合理性、その目的を達するための手段の必要性、合理性、とくに、他に選びうる、より制限的でない手段の有無、目的と手段の合理的関連性の有無など、その他諸般の事情を考慮して、制約する者において厳密に立証されなければならない。予算の欠如はその合理的理由とはならない。
第2章 出生における差別禁止
・胎児は、出生に関し、障害を理由とした差別を受けない権利を有する。
・妊娠、出産に際し、重篤な障害を持つことが明らかとなった場合でも胎児は生きる権利を有する。
・胎児に対する障害を理由とした堕胎は、これを禁止する。
第3章 性、婚姻、出産における差別禁止
・障害を持つ人は、性を有する個人として等しく尊重される。
・障害を持つ人は、性、婚姻、妊娠及び出産に関し、障害を理由とした差別を受けない権利を有する。
・障害を持つ人は、婚姻もしくは異性との交際に関する条件として避妊、堕胎もしくは相続放棄を強要されない。
・障害を持つ人は、子宮摘出および断種を強要されない。
第4章 教育における差別禁止
・障害を持つ人は、統合化された環境における公教育を受ける権利を有する。
・障害を持つ人は、保育園、幼稚園、普通学校、普通学級から分離されない。
・障害を持つ人は、そのニーズに応じた支援を求める権利を有する。その支援には、育児施設および学校へのアクセス、教師又は専門職種の加配、コミュニケーションに必要な人的物的手段の提供、その他教育上必要とされる機材備品の提供を含む。
・障害を持つ人への教育は、障害を持つ人、親族、教育提供者の3者の合意に基づく個人プログラムに基づかなければならない。
・個人プログラムの合意が出来ない場合、合意が出来てもそれに不服がある場合には、障害を持つ人もしくは親族は、障害者差別に関する委員会の提供する調停等の手続きが利用できる。申立を受けた機関は、調停が成立しない場合、是正命令を発することが出来る。更に加えて、司法機関における訴訟手続きも利用できる。
第5章 コミュニケーションにおける差別禁止
・手話及び点字は、日本語と同等の扱いを受ける。
・聴覚障害もしくは視覚障害を持つ人は、日本語のみを学習し、使用することを強制されない。
・聴覚障害もしくは視覚障害を持つ人は、幼児期から手話もしくは点字言語の修得及びそれによるコミュニケーションの機会が保障される。ただし、その機会は、公教育から分離されるものであってはならない。
・知的障害、聴覚障害および視覚障害を持つ人は、公共的機関及び不特定多数に対して情報を提供している一定規模の民間の機関に対して、障害を持つ人が利用可能な情報伝達手段による情報の提供を求める権利を有する。
・これらの機関が保有するITシステムは、アクセシブルでなければならない。
・知的障害、聴覚障害および視覚障害を持つ人は、公共的機関がその申告を求める情報に関し、障害を持つ人にとって利用可能な情報伝達手段によって情報提供することが出来る。そのことによって不利益を受けない。
・電話及びそれに類する通信事業者は、聴覚障害を持つ人の電話利用を可能にしなければならない。
第6章 自立生活
・障害を持つ人は、地域で自立した生活を営む権利を有する。
・障害を持つ人は、何処に住むか、誰と住むか、どのような生活をするかについて、自己決定権を有する。
・障害を持つ人は、公営民間を問わず、アパートの入居に関して障害を理由とした差別を受けない権利を有する。
・障害を持つ人は、強制入所を認める法律の定める手続きによる場合を除いて、施設で暮らすことを強要されない。
・国および地方公共団体は、障害者が地域で生活可能な支援サービスを全面的に提供しなければならない。
・自立生活の権利は、不十分な地域生活支援サービスの現状によって制限的に解釈されてはならない。
・自立生活の権利は、地域生活支援サービスによる反射的利益として理解されてはならない。
・自立生活の権利を侵害された場合には、障害者差別に関する委員会のほか、直接に司法機関に救済を求めることが出来る。訴えを受けた裁判所は、金銭賠償のほか、自立生活に必要な作為もしくは不作為の措置を命じることが出来る。
第7章 虐待、放置、金銭的搾取の禁止
・障害を持つ人に対する虐待、放置、金銭的搾取は、これを禁止する。
・障害を持つ人を対象とするあらゆる施設は、障害を持つ人に対する虐待、放置、金銭的搾取を未然に防止し、虐待等が発生したときには、その被害を回復するためのシステムを設けなければならない。
・施設は、虐待等の被害を申告した障害を持つ人に対して不利益な取扱をしてはならない。
・施設の職員は、虐待等が発生したときには、その事実を施設内の権利擁護担当部門に申告しなければならない。申告を怠った職員は、虐待等の行為をした職員と同等の責任を負う。
・施設は、虐待等の行為が発生した場合、監督官庁並びに障害者差別に関する委員会にその旨申告しなければならない。
・施設の障害を持つ人に対するサービスは、強制入所の場合を除いて障害を持つ人と施設の合意に基づく個人プログラムに基づかなければならない。この個人プログラムによるサービスの提供がない場合は、放置とみなされる。
・施設は、サービスを提供するに当たって日常生活、健康管理、金銭管理に関する記録を作成しなければならない。この記録は、障害を持つ人、親族が要求したときには随時に、要求しない場合でも定期的に開示しなければならない。
・虐待等の被害を受けた障害を持つ人もしくは親族は、障害者差別に関する委員会にその救済を求めることが出来る。申立を受けた機関は、施設に対して報告を求め、調査をなす権限を有する。申立を受けた機関において調停が成立しない場合、施設に対して侵害を救済するに足りる相当の是正命令を発することが出来る。更に加えて、司法機関における訴訟手続きも利用できる。
第8章 就労に於ける差別禁止
・障害を持つ人は、募集、採用、就労形態、賃金体系、昇進、解雇、その他すべての労働条件において、障害を理由とした差別を受けない権利を有する。
・障害を持つ人が、募集時に求められる職務を果たすうえで最低限必要とされる能力を持っているにもかかわらず、他と異なった扱いを受けることは、差別とみなされる。
・障害を持つ人が、募集時に求められる職務を果たすうえで最低限必要とされる能力を持っているにもかかわらず、他の障壁によってその職務の遂行に支障がある場合、雇用事業体は、その障壁を解消するための人的物的支援を提供しなければならない。支援を提供しないことは差別とみなされる。
・人的物的支援がその事業体の運営に関して極めて重大な支障をきたす場合には、適用事業体はその支援の義務を免れるが、それに代わる代替措置を講じなければならない。
・法定雇用率に基づいて障害を持つ人を受け入れていることは、差別をしていないことの弁明とはならない。
・就労に関して差別を受けた障害を持つ人は、障害者差別に関する委員会、労働基準監督署にその救済を求めることが出来る。申立を受けた障害者差別に関する委員会は、適用事業体に対して報告を求め、調査をなす権限を有する。申立を受けた機関において調停が成立しない場合、適用事業体に対して差別を防止し、受けた侵害を救済するに足りる相当の是正命令を発することが出来る。更に加えて、司法機関における訴訟手続きも利用できる。
第9章 交通アクセス
・障害を持つ人は、移動に関して差別を受けない権利を有する。
・移動に供される軌道車輌、航空機、バス、船舶、タクシー、リフト、ロープウエイ及びそれらの内部に併設してあるトイレ、食堂、電話、案内板等の設備は、車いす利用者やその他の障害を持つ人にとって利用可能なものでなければならない。
・交通事業体は、その運行の安全に重大な支障が生じることが明らかな場合を除いて、障害を持つこと自体をもしくは、障害を持つ人が白丈、車いす、ストレッチャー、松葉杖、その他の補助具や、盲導犬など自立を支援する動物を利用すること理由にして、サービスの提供を拒否し又は他の利用者と異なる条件を提示してはならない。
・道路、駅舎、バス停、空港、タクシー乗り場、乗船場、その他の乗車場、それらに付帯する施設における垂直、水平移動及びそれらに併設してある内部設備の使用に関して同様である。
・ここに言う利用可能とは、単に物理的な障壁が除去されていることを意味するだけではなく、可能な限り同一経路による移動が保障されるものでなければならない。
・既設の車輌及び施設に関しては、省令に基づいて猶予期間をおくことが出来る。但し、猶予期間中であれ、可能な限り利用可能な代替設備、代替システムの措置が講じなければならない。
・交通アクセスに関する差別は、障害者差別に関する委員会のほか、直接司法機関に救済を求めることが出来る。訴えを受けた裁判所は、金銭賠償のほか、必要な作為もしくは不作為の措置を命じることが出来る。
第10章 建築物へのアクセス
・障害を持つ人は、公共の建物、公共の屋外施設、不特定多数にサービスを提供する民間建物及び集合住宅のうち一定規模以上の建物(公共的建築物)へのアクセス及びそこにおいて提供されるサービスの享受に関して差別を受けない権利を有する。
・公共的建築物への出入り、内部に於ける水平、垂直移動および内部のトイレ等の使用は、車いす利用者やその他の障害を持つ人にとって可能なものでなければならない。
・障害を持つ人は、提供されるサービスを享受するに当たって、障害を持つこと自体を理由として、もしくは、障害を持つ人が盲導犬、白丈、車いす、ストレッチャー、松葉杖、その他の補助具を利用することを理由にして、サービスの提供を拒否され、もしくは、他の利用者と異なる条件の受諾を強要されない。
・既設の建築物に関しては、省令に基づいて猶予期間をおくことが出来る。但し、猶予期間中であれ、可能な限り利用可能な代替設備、代替システムの措置を講じなければならない。
・建築物へのアクセス及びサービスに関する差別は、障害者差別に関する委員会のほか、直接に司法機関に救済を求めることが出来る。訴えを受けた裁判所は、金銭賠償のほか、必要な作為もしくは不作為の措置を命じることが出来る。
第11章 その他の公共サービスにおける差別禁止
・障害を持つ人は、障害を理由として、前2章のほか、国又は地方公共団体が提供するサービスまたは活動から排除され、その便益を拒否され、他と異なる扱いを受けない権利を有する。
第12章 資格に取得における差別禁止
・障害を持つ人は、社会参加に関して、平等な機会を与えられ、更に職業選択に関して差別されない権利を有する。
・障害を持つ人は、国又は地方公共団体の認定する資格において、障害を理由とした制限を受けない。その資格が最低限必要としている実質的能力との関連においてのみ判断さるべきであり、その旨の立証がない限り障害を理由とした資格制限は差別であるとみなされる。
・資格制限に関する差別は、障害者差別に関する委員会のほか、直接に司法機関に救済を求めることが出来る。
第13章 参政権に於ける差別禁止
・障害を持つ人は、政治参加に関して、平等な機会を保障される。
・選挙に関する手段、方法、場所は、障害を持つ人にとってアクセシブルであり、かつ秘密が保持できるものでなければならない。
・施設内における投票所の設置は、これを禁止する。
・障害を持つ人は、選挙に関する情報に関して、障害を持つ人に利用可能な情報伝達手段で提供されることを求める権利を有する。
第14章 刑事司法に関する差別禁止
・障害を持つ人は、被害者であれ、加害者であれ公平な刑事司法手続きを受ける権利を有する。
・障害を持つ人は、刑事司法における攻撃防御に関して、障害に基づく不利益を受けない権利を有する。
・障害を持つ人は、刑事司法手続きにおいて、弁護士を含む適切な人的支援と警察、検察、裁判所の適切な配慮を求める権利を有する。
第15章 実施及び救済機関
・この法律を実効性あるものにするために、その実施及び救済機関として障害者差別禁止に関する委員会を設置する。
・この委員会の理事会は、障害を持つ人、権利擁護に関する学識経験者、弁護士、検察官、裁判官等から構成され、かつ行政から独立した組織とする。
・この委員会の実施機関としての職務及び権限は以下のとおり。
・障害を持つ人のおかれている現状を調査して、我が国の差別の実体を明らかにすること、
・ 差別をなくすための諸施策の策定し、その実施を統括すること
・ 権利擁護に関する情報を提供し、権利擁護に関する教育を統括すること
・構造的な差別に関しては、勧告ないし、是正命令を発すること
・この委員会の救済機関としての職務及び権限は以下のとおり。
・地方公共団体を一つの単位として都道府県障害者差別禁止に関する委員会を設置し、複数の救済委員を任命する。
・都道府県の委員会は、申立を受けると、まず、任意の調査をしなければならない。任意の調査によって事案が明らかにならない場合でかつ事案の解明が必要と思料される事件に関しては、職権による立ち入りも含めた調査を実施する。
・調査の結果、差別虐待等の行為が明らかに存在しないと思料する場合を除いて、救済委員が被害の回復に向けた調停を開く。
・調停が不調に終わった場合でかつ差別行為が認定されるときには、事案の重大性、緊急性に応じて、是正命令、警告、勧告、要望、公表等の処分なす。
・被害者の救済に必要であれば、緊急一時保護により、被害者を保護しなければならない。
・また、行為が犯罪にわたると認定したときには、刑事告訴をしなければならない。
・事案の重大性、被害の広範性に鑑み、訴訟を提起しなければ、根本的な救済にならないと思料するときには、自ら訴訟を提起し、又は、被害者が起こした訴訟に参加することが出来る。
・国は、司法救済に関して、裁判所が実効性ある救済手段を持ち得るよう事案の特性にあった調停、裁判の手続き、判決手法を整備しなければならない。
第16章 権利擁護団体の育成
・国は、障害を持つ人の立場に立って権利を支援する当事者団体、親の会、NPO団体、公益法律事務所等の育成をはかり、経済的助成を行わなければならない。